文の練習

あの時の「あっぷる書店」で

10月12日で1年が経ちます。当初より応援してくださった皆様、ありがとうございます。「屋台の延長のような店」などと言って未完成のまま始まったものの、店らしくないにも限度があるだろうに、と思うほどグダグダな状態で開店。まだまだ思うようにはいきませんが何とかやっております。1年前に想像していた通りになったこともあれば、まったく違う結果になったこともあり、店はつねに有機的なもの。奮闘しながらも、なかなか面白くやらせていただきました。

最近よく思い出すこと。
小学生の頃、衣笠に「あっぷる書店」という古書店がありました。当時は近所にあったので、時々ぷらりと入っては少ないお小遣いで買えそうな本を物色していました。小さな店でしたが、マンガに力を入れているのが子どもながらにも見てとれたし、今考えても不思議に面白かったというか、自分にとって魅力的なお店だったのでしょう。タレント本も多くて青島幸男の『ざまァみやがれ!』がどうしても欲しかったけれど、こんな破廉恥でデタラメな本を持って帰ると親に怒られる、と思うと怖くて買えなったことを長年後悔しており、それを今思い出してネットで注文した次第。

当時流行のマンガもあれば、店主が密かにセレクトしているような棚もあり、レジ近くには『のらくろ』の初版本や当時発売されていたキャラクターグッズや時計、レトロな雑貨が大事そうにガラスケースに並べられていました。もちろんびっくりするようなお値段なので、いつも眺めては楽しむだけ。必要でもないし、思えば好きなテイストでも無かったのに、もう、どうしようもなく「欲しいいいいい〜〜!」と思っていたりしていました。古いマンガはナントカコミックスとは違って装丁の雰囲気も規格も自由な気がして、これまた「欲しいいいいい〜!」とハンカチ噛みしめながら、初見の水野英子のマンガを手に取ると3000円。おばさんに「なんで?」と聞くと不機嫌そうに、「そういうもんやから」とだけ言われた気がします。その時にガガーン!と頭を打たれたというか、何となく、分かったような。
その時は身分不相応な買い物なので、買えませんでした。しかしその後も自分が何を好きなのかが分からず、店内をくまなく調べて、どうしても我が物にしたい!と思うものを探しに行ったもので、きっとその行為が楽しかったはず。「どうしても何かを買いたい」と思いたかった欲求が忘れられず、なぜモーレツに欲しいと思ったのか?思わせたのか?を考えずにはいられませんでした。「あっぷる書店」は高校生にあがる頃にはもう別の場所に移転してしまい、私は古本屋に通うなんてことはすっかり忘れてしまいました。

ある時から商品があって、それを作る人、売る人、買う人、消費の関係やきっかけや流れに興味があったような気もする、というのは後付けなのですが、私にとってはそれを考える場が今の店です。
店に入って気に入りそうであれば、私ならゆっくりと見たいので、あえて積極的にご説明はしていません。現代の作り手さんの作品も、古い物も、プロダクトも、海外のものも、何となく関連のありそうに、ない交ぜにして並べています。本のセレクトショップで働いていた影響からかもしれません。しかし物販としてはとても分かりにくく、売れにくい並べ方です。逆に言うと見ようとする人にしか、見えにくいつくりになってしまいました。果たしてそれで良いのか?店だから変わっていくかもしれません。でも今のKitはそんな感じです。